※本記事のあらすじ・感想には、公式紹介文の範囲を含む軽度のネタバレがあります。物語の情報を入れずに読みたい方はご注意ください※
【3段階評価】
★★★《超おすすめ!!》
おすすめできる人
・懸命に生きるキャラクターに共感したい人
・コンプレックスに悩んでいる人
あまりおすすめ出来ないかもしれない人
・カバーの怪異(?)的なものの出現を期待している人(がっつりヒューマンドラマです)
・性描写(性暴力)シーンがあるため、そのようなシーンが苦手な人
※決して悪い意味ではないのですが、筆力が高いため非常に生々しく描かれています。
基本情報
㊗️直木賞受賞㊗️
著者:朝倉かすみさん
刊行:2026年4月
ページ数:316ページ
管理人が読破までにかかった時間:5時間 ※結構時間がかかる印象です
あらすじ
時は江戸時代後期。幼い頃に患った疱瘡によって、顔を含む全身に痘痕が残った少女・ふゆ。人一倍利発でありながら、その容姿ゆえに「世間並み」の幸せを望むことを、知らず知らずのうちに諦めながら生きてきた。
手習い師匠の手伝いとして自分の居場所を得たふゆだったが、師匠の養子・宗三郎との出会いによって、その人生はさらに過酷な方向へと転がり始める……。
容姿や性別によって世間の「圏外」へ追いやられた彼女が、幾度も打ちのめされながら、自らの生きる道と尊厳をつかみ取っていく姿を描いた時代小説。
〈感想〉良かったところ
第175回直木賞で見事受賞した本作。
今回の候補作は女性著者が多く、女性を題材にした作品が中心だったが、中でも『けんぐゎい』は飛び抜けて良かったように感じた。
昔(江戸)の描写を見ると、女性の扱いを含めてやはり現代とは違う部分が圧倒的に多いことを再認識させられる。そして、その上で現代ととても隔たりがある時代であると感じた。
同時に「ここはまだ昔のままだな、、、」という偏見や抑圧もあった。江戸からの悪い風潮が今にも引き継がれていると思うと、人の価値観は簡単には変わらない。その点まで考えさせられる作品だった。
男性キャラの描き方も、必要以上に露悪的に描かれているようなことはなく、納得感があった。
明確に醜悪な人物も登場するが、単なる悪役ではなく、時代や教育によって歪められた人間として見える点が印象に残った。
時に人は自分に割り当てられた運命を恨み、憎み、己や身内や他人を責め、苦悩してしまう。
でも人には人の「善し」がある。もしその「善し」を少しでも愛してくれる人がいるならば、その人ひとりのためだけにでも生きる価値があるのではないだろうか。もしそんな人がいないならば、懸命に生き抜いている自分を、自分だけは愛してあげるべきなのではないか?
懸命に生きる主人公たちを見て、そんなことを感じることができる作品。
〈感想〉いまいちだったところ ※あくまで個人的な所感です
個人的にはあまり気になるところはなかったのだけど、強いて言うならば、もう少しテンポがあっても良かったかもしれない。
316ページの作品にしては非常に長く感じた。
あとは時代小説を読み慣れていない人は要注意。
私自身普段はもっぱらミステリーやホラーばかりなので、時代小説を読むのには労力を使う。(こんな理由もあって長く感じたのかな……?)
総評
過酷な境遇に置かれた女性の苦しみだけでなく、そこから自分の価値と居場所をつくり直していく過程に力がある作品だった。
性暴力や差別を扱う場面は重く、読む人を選ぶ一方で、ふゆたちが世間の「圏外」を自分たちの生きる場所へと変えていく姿には、確かな希望が残る。重い題材を扱いながらも、最後には人間の強さを感じられる作品を読みたい人におすすめしたい。
